一昨日のできごと
斬新なセンス
食事の際、母はお皿を食卓に運んでくれます。お箸も並べてくれるのですが、なぜかほぼ毎回不思議なことになっています。
組み合わせが変です。
色が似ているので間違えるのも仕方ないと思います。ただ、毎回のように間違えるので、もしかしてこういう組み合わせだと思っているのかもしれません。
だとすると、かなり斬新なセンスだな、と思います。
デイから帰ってきた母との会話
どうやら私が仕事で海外駐在していて、数年ぶりに日本に帰ってきたと思っているようです。
アメリカに駐在なんてしていません。1日前に会っています。
でも、否定するのはよくないので、寄り添うウソで答えます。
それにしても、私は海外に行くような仕事はしたことはないのに、なんで急にそう思ったんだろう?昔のことと混同して作話するっていうのは認知症に人にはよくあることだけど。
突拍子もないこと言うから面白いな〜。
どちらも、些細なたわいのないできごとです。
でも、客観的にふと気づいたんです。
「あ、私、これ面白いと思っている。楽しいと感じている。」って。
以前の私なら、こんな風に心の中でイライラしていました。
「お箸の組み合わせなんて、なんでこんな簡単なことがちゃんとできないの?」
「つじつまの合わない話ばっかりして、聞いているだけで疲れるわ」
そんなイライラを感じず、楽しめるようになったのは、「時間」と「経験」のおかげです。
約6年間の介護生活を現時点で振り返ってみると、初期の頃が一番つらかったです。今は今でもちろん悩みはありますが、精神的なつらさでいえば今のほうが断然軽いです。
つらかった初期の頃→もの盗られ妄想で泥棒扱いされることに疲弊していた日々
認知症介護は初期の頃が一番つらいワケ
イライラや不安を感じながら過ごすのはつらいです。
私に限らず、「認知症介護は初期のころが一番つらい」という人は少なくありません。
それは、主にこういった理由からです。
- 認知症の症状がよくわからず、なぜそんなことをする・言うのか理解できない。どう対処していいかわからない。
- 何をどうすればいいのか、これからどうなるのか、誰にも相談できない。誰に相談していいかもわからない。不安と焦りで自分の気持ちに余裕がなくなっている。
- 日常生活はまだそこそこできるため、親が認知症だということを認めたくない気持ちと葛藤している。
介護も仕事もはじめは同じ
介護はだんだんと慣れてきます。
認知症の症状を理解するにつれ、こういうときにはこう対処すればいい、とわかるようになります。
支援してくれる人や介護仲間と知り合うことで、悩みや不安を軽減できるようになります。
仕事だって同じですよね。これまでやったことのない仕事は、初めてのことばかりで知識も経験もありません。だから、時間もかかるし、きちんとできるか不安です。
でも実践で学び経験を積むことで、少しずつその仕事ができるようになります。自信だってついてきます。
初期を乗り越えよう
なんだってはじめは不安です。一番大変なのは初期なんです。
私もそうでした。
なんでこんなことになったんだろう。これからどうなるんだろう。何をどうしたらいいんだろう。毎日そんなふうに思って、軽い介護うつになりました。
それが今では、母のよくわからない不思議な言動を楽しめるようになりました。「時間」と「経験」が、不安を軽減してくれたからです。
だからもし、「親が認知症になって大変だ。つらい」と感じている介護初期の人がいたら「一番つらいのは今。これを乗り越えたら少し楽になるよ。だから気持ちを追いつめないで。」と伝えたいです。
ななのひとこと・ふたこと
我が家でたまに使っている箸置きはパンの形をしています。パン好きな私に、以前友達がプレゼントしてくれたものです。