先日、歯科医師が登壇する講演会で「高齢者の口腔ケアの重要性」について話しを聞いてきました。
厚生労働省の調査によると「食べること」は高齢者の楽しみや生きがいの中で大きな割合を占めるそうです。
では、食事を美味しく食べるために必要なことってなんでしょうか?
- 歯がある(入れ歯がある)
- お口の中の環境が整っている(口の中が健康)
- 食べものを咀嚼(噛み砕く)することができる
- 食べ物を正しく飲み込むことができる(嚥下)
高齢者はオーラルフレイルになりやすい
高齢になると、よほど気をつけていない限りこうしたことがだんだんと難しくなっていきます。オーラルフレイル(口腔機能の低下)の始まりです。オーラルフレイルは【フレイル】の入り口だと言われています。
フレイルってなに? → 高齢者に起こりやすいフレイル その症状と対策
オーラルフレイルになると
- 口から食べ物をこぼす
- ものがうまく飲み込めない
- 滑舌が悪くなる
- むせやすくなる
摂食嚥下障害はなぜ起こる?
食べ物を認知する能力の低下や、むせや食べこぼし、滑舌の悪化などから始まります。
食べるという行為に、視覚はとても重要です。硬さ、食感を予想・予測することで、私たちは無意識にそれぞれの食べものに適した噛みかたをしています。
オーラルフレイルになってしまう要因
以下の要素が欠如するとオーラルフレイルになりやすくなってしまいます。
社会性
社会に興味がなくなると、外に出なくなり家に引きこもる。身支度を整えて外出するのが面倒になる。
バランスの良い食事
食事をしっかり食べられないと栄養不足に陥りがち。
歯や口の定期的な管理
歯がなくなったり口の中の衛生状態が悪いと口腔内環境はどんどん悪化する。食べられるものも減ってしまう。
唾液の分泌量が減ると、虫歯や歯周病のリスクが高くなる。
運動
咀嚼しないと口内の筋肉が衰えていく。噛むためには口の筋肉を鍛える。
噛む→食べ物が口の中で散る→食べ物を集める→飲み込む(唾液と混ざることで飲み込みやすい食形態になる)。これをうまくできないと口の中に食べ物が残ってしまい、誤嚥につながりやすい。
脳にも血流がいかなくなる。噛むと脳の刺激になる。
外出しないと手足の筋力も低下してしまい、さらに悪循環。
フレイルを予防するには
- しっかり噛む
- しっかり食べる
- しっかり動く
- しっかり社会参加する
フレイルを予防することは摂食嚥下障害の予防にも繋がります。
認知症の人の口腔変化
認知症の人は口腔衛生状態が悪くなりやすいので、特に注意が必要です。
虫歯、歯周病多発
- 自発的に歯磨きをしない→口腔衛生状態が悪くなる(残っている歯が多いほうがケアは難しい)
- 入れ歯の取り扱い、手入れをきちんとできない
- 入れ歯の誤嚥にも注意(特に部分入れ歯)
口腔粘膜病変の重症化
治療が難しい
- 口を開けてもらえない
- 口を開けてもらえたとしても、口に手を入れると噛む
- 高速で細かい動きの器具を使用中に動くと、口の中を傷つけてしまう
- 治療を拒否する
- 治療中に誤嚥しやすい
→口の中の観察や口腔ケアが困難
→口内炎や他の粘膜疾患が重症化する、口腔ガンの発見の遅れに繋がる可能性もある
咀嚼機能の低下
- 虫歯の破折や入れ歯を装着するのが難しい
- 歯が自然に抜ける→咀嚼機能が低下する
- 破折した歯の誤嚥に注意する
口腔ケアの目的
- 虫歯、歯周病の予防
- 口臭の予防
- 味覚の改善
- 唾液分泌の促進
- 誤嚥性肺炎の予防
- 会話などのコミニュケーションの改善
- 生活のリズムを整える
- 口腔機能の維持・回復
以前の歯医診療は虫歯治療がメインでしたが、今は予防歯科(口腔機能の維持・向上)に重点が置かれています。
口腔ケアを行うと爽快感が生まれて、食欲が増します。口腔内の細菌を減らし、結果として誤嚥性肺炎のリスクを軽減することができます。口腔ケアをしっかりすれば、全身的感染症の対策にもなるのです。
ななのひとこと・ふたこと
歯って本当に大事だなあ、と思います。私自身も、口腔ケアは意識してしっかりとやるようにしています。