墓地や納骨堂の「宗旨・宗派不問」ってどういう意味?

制度・法律

墓地や納骨堂などを探していると、「宗旨・宗派不問」という言葉をよく目にします。
「どんな宗教でもいい、という意味かな」と思いますが、実はそう単純ではありません。施設によって意味する内容が違っていることがあるので、注意が必要なのです。

「宗旨」「宗派」とは

そもそも「宗旨」と「宗派」は、一体どんな意味なのでしょうか。

宗旨とは

宗旨とは、仏教や神道、キリスト教、イスラム教など「宗教の教え(教義)」のことをいいます。

宗派とは

宗派は、宗旨それぞれの教えや信仰対象の違い、過去の分裂などによって生み出された、派閥のようなものです。通常は仏教において用いられる言葉で、キリスト教や神道の派は「教派」といいます。

仏教の中には数多くの宗派があり、例えば、天台宗や真言宗、浄土宗などが挙げられます。

「宗旨・宗派不問」の意味

「宗旨・宗派不問」の墓地や霊園であっても、必ずしもどんな宗教でも大丈夫というわけではないので注意しましょう。

墓地・霊園によって意味合いが違うことがある

「宗旨・宗派不問」と聞くと、どの宗派であってもよいというように思う方も多いかもしれません。しかし実際には、墓地や霊園によって異なる意味で使われていることがあります。

特に、寺院墓地(お寺の境内の一画にある墓地)の場合は注意が必要です。「宗旨・宗派不問」かつ「改宗不要」であっても、その後の供養や法要はお寺の宗派に則ってやらなければいけないなどの制限が設けられていることがあります。

「宗旨・宗派不問」には4つの意味がある

「宗旨・宗派不問」という言葉には、大きく分けて以下の4つの意味合いがあります。

  • 宗旨・宗派一切不問
  • 過去の宗旨・宗派は不問
  • 在来仏教なら宗派不問
  • 仏教なら宗派不問

きちんと理解せずに契約してしまうとトラブルになりかねません。以下、それぞれの違いをお伝えします。

宗旨・宗派一切不問

文字通り宗旨・宗派は問われず、仏教であればどの宗教であっても問題なく利用できます。宗旨や宗派について特に制限がなく、あらゆる宗旨・宗派を受け入れてくれます。ただし、仏教以外のキリスト教や神道などの場合は利用できません。

自治体が運営する公営墓地や一部の民営霊園がこれに該当します。

過去の宗旨・宗派は不問

「過去の宗旨・宗派は不問」となっている場合、これまでどの宗教・宗派だったかは問われません。ただし、お墓を建ててからはそのお寺の宗派に則って法要や供養を行わなければならないケースが一般的です。宗旨・宗派不問といっても、今後はお寺が定めた一定のルールに従うことになります。

大きく分けて2つのパターンがあります。

パターン1:お寺の檀家にならなければならない

それまでの宗旨・宗派は問わないけれども、墓地を購入するにあたり、そのお寺の檀家(信徒)にならなければならないという決まりを設けているパターンがあります。

檀家になると、寄付や法要への参列が必須になる、今後の葬儀や供養はそのお寺にお願いしなければならないなどの義務が生じることになります。

事実上、これまで信仰してきた宗教・宗派から改宗するということになるので、慎重に確認しましょう。

パターン2:今後の供養はお寺が執り行う

檀家になることまでは求めないけれども、今後の供養はそのお寺の宗派に従って行うというパターンです。民間霊園や納骨堂などの場合は、このパターンが多いです。

在来仏教なら宗旨・宗派不問

「宗旨・宗派不問」と表記されていると、「仏教であれば使用可能」と読み取れますが、「過去の宗派が在来仏教ではない場合は使用を認めない」とする墓地や霊園もあります。

その場合、「宗旨・宗派不問ただし在来仏教に限る」と表記されていることが多いですが、表記されていないこともあるので注意が必要です。

在来仏教とは

明治初期の時代までに日本に根付いて活動を行っている仏教の宗派のことです。
具体的には、真言宗、浄土宗、浄土真宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗、天台宗、黄檗宗、時宗、法曹宗、華厳宗、融通念仏宗、律宗の13宗を指します。

「在来仏教に限る」と明記されている場合、上記13宗であれば使用できますが、それ以外の宗派や新興宗教は仏教であっても使用できません。
宗旨・宗派不問といっても、従来から存在する仏教の宗派に限定されているので注意しましょう。

仏教なら宗派不問

「仏教なら宗派不問」というのは、在来仏教以外でも仏教であれば使用できるという意味です。キリスト教や神道など、仏教でない宗教のお墓は建てられないことになります。

「宗教不問(宗教自由)」なら制限がない

これまでご紹介した「宗旨・宗派不問」とは別に、「宗教不問(宗教自由)」の墓地や霊園もあります。

「宗教不問(宗教自由)」の場合、宗教についての制限がまったくないので、仏教・神道・キリスト教はもちろん、その他の宗教や無宗教の人でも使用できます。

公営霊園はすべて「宗教不問(宗教自由)」です。また、民営霊園でも「宗教不問(宗教自由)」としているところがあります。

「宗教不問」の意味合いで「宗旨・宗派不問」と表記している墓地や霊園もあるので、確認することが重要です。

ななのひとこと・ふたこと

「宗旨・宗派不問」という言葉は、墓地や霊園によって意味合いが異なります。

ホームページや墓地探しのポータルサイトなどでは、単に「宗旨・宗派不問」と表記されているだけで、区別できないことも多いです。見学する前に、電話などで問い合わせしてみることが大切です。