墓じまいと改葬の違いは?役所で必要な手続きとは?

制度・法律

最近、「墓じまい」についてテレビやインターネットで取り上げられる機会が多くなりました。また、墓じまいと合わせて「改葬」という言葉を耳にした人もいるでしょう。

墓じまいと改葬は、厳密にいうと異なるものです。そこで、今回は、墓じまいと改葬の違いについてご紹介します。

墓じまいと改葬の違い

墓じまいと改葬の意味は、それぞれ以下のとおりです。

墓じまい・・お墓を解体・撤去すること
改葬・・今あるお墓を別のお墓へ移動・引っ越しさせること

改葬とは、いわば「お墓の引っ越し」です。お墓を引っ越しするためには、まずお墓の撤去(墓じまい)が必要です。つまり、墓じまいとは、改葬を行うえで必要な工程のひとつといえます。

墓じまいにせよ改葬にせよ、寺院墓地であれば住職の了承を得なければなりません。お墓の撤去料や寺院へのお布施などのほか、檀家になっている場合は、離檀料を求められることもあります。

ちなみに、今あるお墓を処分して、手元供養や散骨などの供養方法を選択した場合は、改葬ではなく墓じまいとなります。

墓じまいは「お墓を処分すること」

墓じまいとは、今あるお墓を解体・撤去して更地に戻し、墓地の管理者に使用権を返還することをいいます。ひと言で表すなら「お墓を処分すること」と言い換えることもできるでしょう。

墓地は、土地を購入しているのではなく土地の使用権を借りてお墓を建てている状態なので、墓じまいをする際は、墓地の使用権を管理者に返すというわけです。

核家族化と少子高齢化が進むなか、「お墓を継ぐ人がいない」「遠方でお墓参りに行くのが大変」「子どもに迷惑をかけたくない」といった理由から、墓じまいする人が増えています。

ちなみに、仏教の場合は、お墓を解体する前に「魂抜き」と呼ばれる供養を行うのが一般的です。

改葬は「お墓の引っ越し」

改葬とは、墓じまいに伴い今のお墓からお骨を取り出し、別の施設や墓地に埋葬あるいは納骨することをいいます。簡単に表現すると「お墓の引っ越し」です。

今あるお墓を閉じるため、墓じまいと混同しやすいのですが、改葬と墓じまいでは明確な違いがあります。

お墓を閉じる(撤去する)点は共通していますが、墓じまいは「お墓を閉じることのみ」を指し、改葬は「お墓を閉じた後のお骨を供養すること」までを含みます。

墓じまいを考え始めたら、将来どんな形での供養を望んでいるのかを、自分だけでなく家族や親族と相談するようにしましょう。

墓じまい(改葬)後はどうするか

墓じまいを考えた場合、「お墓から取り出したお骨をどうするか」ということを同時に検討しなければなりません。

墓じまい後の供養方法

墓じまい後の供養には、樹木葬、納骨堂、合祀、散骨、手元供養などさまざまな方法があります。

墓じまいを行う理由の多くは、「跡を継ぐ人がいない」「遠いのでなかなかお参りに行けない」「子どもや親戚などに負担をかけたくない」といったものです。そのため、墓じまい後にまた同じようなお墓に改葬をするのでは意味がありません。

生活スタイルや価値観に合わせて、故人をしのびやすく負担の少ない方法を選びましょう。

家族や親族とも相談する

遺骨の供養方法は自分だけで決めるのではなく、家族や親戚とも相談し、関係者がそれぞれ納得できる納骨先を探すことが重要です。

故人やご先祖に対する思いが共有できれば、お墓の場所や形式、納骨方法などはかなり絞られてくるのではないでしょうか。

墓じまいは既存のお墓を撤去して終わりではありません。その後、どのように供養するか、先々まで見越して無理のない選択をするといいでしょう。

役所の手続きについて

改葬をする場合は、法律により定められている手続きが必要になります。

改葬する場合は許可証が必要

改葬する場合、役所で手続きをしなくてはなりません。

具体的には「改葬許可証」という証明書類が必須となります。「改葬許可証」がないと、現在のお墓から遺骨を取り出して、新しいお墓に移転することができません。

改葬許可証を取得する流れ

  1. 移転先のお墓の管理者から「受入証明書」を発行してもらう。
  2. 現在のお墓がある市区町村から「改葬許可申請書」を入手する(申請書には「誰の遺骨を」「どのような理由で」「どこからどこへ移動するのか」などを記入)。
  3. 現在のお墓の管理者に「埋葬証明書」の発行を依頼する(改葬許可申請書が埋葬証明と兼用になっている場合もあるので、その場合は改葬許可申請書に署名捺印してもらう)
  4. 現在のお墓がある市区町村に「受入証明書」「改葬許可申請書」「埋葬証明」を提出し、「改葬許可証」の交付を受ける。

手元供養または散骨なら役所の手続きは原則として不要

自宅で遺骨を保管する手元供養、海や山などに粉骨した遺骨をまく散骨は、遺骨を別のお墓や納骨施設に埋葬したり納骨したりするのではないため、改葬にはあたりません。そのため、基本的には改葬許可証は不要です。

ただし、手元供養や散骨を希望する場合でも改葬許可の申請を求める自治体(役所)もあります。自治体によって対応が異なるので、手元供養や散骨を希望する場合は事前に必ず確認しましょう。

散骨を行う場合、契約する業者によって改葬許可証を求められることもあるようです。役所では手続き不要だったとしても、業者に提出しなければならないのであれば、結局、役所で手続きが必要になるので注意してください。

ななのひとこと・ふたこと

お墓を閉じた後のお骨の供養方法をどうするかによって「墓じまい」なのか「改葬」なのかが区別されます。

どちらを選択しても後悔のないよう、どういった対処をするのか、どのような供養をしたいのかを考えておくことが大切だといえるでしょう。