携帯電話が普及する前までは、どの家庭でも固定電話を使用していました。今でも実家には固定電話があるという人も多いでしょう。もし親に万が一のことがあった場合、固定電話の電話加入権はどう取り扱えばいいのでしょうか。
電話加入権の基本的な情報をはじめ、電話加入権を相続した場合の選択肢などについて紹介します。
親が亡くなったら電話加入権はどうすればいい?
そもそも電話加入権とはどんなものなのでしょうか。実家に固定電話があったら、どうすべきなのでしょうか。
電話加入権とは
電話加入権とは、NTT東日本またはNTT西日本の固定電話回線を契約するための権利のことです。正式名称は「施設設置負担金」といいますが、電話加入権という呼び方が通称となっています。
電話事業が開始された当初、電話加入権という制度はありませんでした。しかし、NTTグループの前身である日本電信電話公社が、戦後復興時に、電話回線を引くための電柱や電線を整備するための資金調達を目的に、設置負担金の支払いを求めるようになりました。
設置負担金を支払う代わりに、電話回線を利用できる権利として電話加入権が与えられるようになったのです。
なお、NTT以外の固定電話サービスやインターネット回線を用いたIP電話などの場合、電話加入権は必要ありません。また、NTTでも最近は電話加入権が不要のプランもあるので、固定電話の契約の際、必ずしも電話加入権の支払いが求められるというわけでもありません。
電話加入権の値段の推移
電話加入権の値段は、時代の流れと共に変化しています。NTTの前身である日本電信電話公社が発足した1952年の価格は60,000円でしたが、何度かの改定を経て、1976年には8万円にもなりました。
民営化でNTTとなった1985年の負担金は7万2000円でした。しかし、高過ぎる価格や携帯電話の普及で固定電話を使う人が減ったことなどが背景となり、2005年3月以降、従来の半額である3万6000円(税抜き)までに引き下げられて現在に至っています。
解約しても電話加入権は返金されない
電話加入権を解約しても、契約するときに支払った電話加入権(施設設置負担金)は返金されません。また、NTTでは電話加入権の買い取りは一切おこなっていません。
業者へ売却できる?
電話加入権は権利なので、売ることができます。金券ショップなどの一般の業者が買取りをしています。しかし、今となっては電話加入権は需要が少ないため、個人の電話加入権を買い取る業者は多くありません。
買取り価格は1,000円程度が相場となっており、さらに名義変更手数料もかかります。電話加入権の売却はあまり現実的ではないといえるでしょう。
電話加入権を保有しているか確認する
実家に固定電話があり、親が亡くなった場合、電話加入権を持っているかを確認しましょう。
インターネット回線を利用したIP電話、ひかり電話などの場合は、そもそも電話加入権を購入しなくても、電話を利用できます。このように、固定電話でも電話加入権を必要としないものもあります。
今の時代にあえて負担金を支払ってまで電話加入権を購入する人はほとんどいません。しかし、高齢の方だと、かなり昔に契約した電話加入権を保有していることが多いです。
電話加入権を保有しているかどうは、局番無しの「116」に電話をかけると確認できます。
固定電話の契約者が亡くなったら相続手続きが必要
固定電話の契約者が亡くなったら、電話加入権の相続手続きをしましょう。そのまま放置しておくと、たとえ使っていなくても毎月の基本料金を支払い続けることになってしまいます。
電話加入権の相続手続きは4種類
電話加入権を引き続き利用するか否かにより、手続きは大きく4種類に分かれます。
引き続き電話を使用する場合
亡くなった親が契約していた固定電話を引き続き使用する場合は、電話加入権の名義変更の手続きをします。亡くなった親からの名義変更の場合、手数料はかかりません。
手続きには、新しい契約者の名前や生年月日、住所がわかる書類や、親の死亡の事実や相続関係が分かる書類が必要になります。
電話を使用しない場合
電話を使用しない場合は、「解約」「利用休止」「一時中断」の中から選択することになります。
解約
今後、電話回線を利用する予定がない場合は、解約手続きをします。
解約は電話加入権を失うことになり、復活させることはできません。同じ電話番号は使えなくなります。また、電話加入権を購入した際に支払ったお金(施設設置負担金)は戻ってこないので注意してください。
解約を選択した場合、工事費や今後の回線使用料は発生しません。
利用休止
当面使う予定はないけれど、またいつかその固定電話を使うかもしれないという場合には、利用中止という手続きがあります。
利用休止は、電話の権利を5年単位でNTTに預けることができる方法です。電話加入権の権利は持ったままで、電話回線を「休止」扱いにするということになります。
利用休止の預かり期間は原則として5年間ですが、最長10年まで休止できます。最初の5年を経過した時点で利用休止の継続または再取付の申し出をしない場合、更に5年間経過した時に契約は解除されたものとして取り扱われます。
5年ごとに意向確認の書類が郵送されてくるので、利用休止を継続したい旨の回答を送り返せば、何年でも権利を所有しておくことができます。届いた書類に回答しないと、10年経過した時点で電話加入権が消滅してしまうので注意しましょう。
電話を休止する時と再開する時にそれぞれ工事費がかかりますが、休止期間中は回線使用料などはかからず無料です。ただし、再利用時には電話番号が変わります。
電話を休止する手数料は2,200円と安いため、解約を迷っている場合にはとりあえず利用休止を選ぶのもひとつの方法です。
一時中断
電話回線を今すぐ利用する予定はないけれど、将来同じ場所で同じ電話番号を利用する予定がある場合は、「一時中断」を選びましょう。
一時中断は、利用休止と同様に回線をいったん止める手続きになりますが、再開する際に電話番号は変わりません。中断できる期間に制限もありません。ただし、中断期間中でも毎月の回線使用料の支払いが必要です。
なお、一時中断する場合も、利用休止と同様に停止時や再開時に工事費用がかかります。
相続手続きの方法
電話加入権の相続手続きは、電話またはインターネットでNTTに連絡をします。
固定電話から連絡する場合は、局番なしの「116番」へ電話をかけると手続きできます。
NTT東日本の場合は、インターネットからも申し込みが可能です。
ななのひとこと・ふたこと
携帯電話が普及するまでは、どこの家でも固定電話があるのが当たり前でした。私も一人暮らしするときに電話加入権を購入しました。利用休止したあと、放置したままになっているから、たぶん失効していると思います・・・。