電話加入権の価値はいくらくらい?相続税の対象になる?

制度・法律

携帯電話(スマホ)が主流になったとはいえ、今でも実家には固定電話があるというご家庭も多いでしょう。

ひと昔前まで、電話加入権は固定電話回線を引くために必須なもので、権利金も高額でした。
では、もし親が亡くなった場合、この権利金(電話加入権)は、相続税の対象になるのでしょうか。

電話加入権にはどれくらいの財産価値があるの?

電話加入権とは、NTTの加入電話回線(固定電話)を利用する際に必要となる権利のことです。「施設設置負担金」とも呼ばれます。

電話加入権は相続財産になる?

電話加入権は購入した人の権利なので、他人に売ることもできます。つまり、購入した人の財産なのです。

親が亡くなり、親名義の固定電話をもう使わないのであれば解約することになるでしょう。しかし、今後も使うつもりがあって解約しない場合、電話加入権は相続財産になります。相続財産は、相続税がかかる対象になります。

メモ

相続税は、亡くなった人の遺産の価値を算定し、その算定した金額(相続税評価額といいます)に基づいて税額を計算します。

現金や預貯金の価値はその額面のままです。しかし、それ以外のもの(例えば土地や建物などの不動産、貴金属など)は価値が一定ではありません。そこで、法律で定められた基準に基づいて遺産の価値を評価する必要があります。

評価額によって相続税の金額が変わってしまうから、相続税評価額を算定することは、税金を計算する上でとても重要なんですね。

電話加入権の相続税評価額

これまで電話加入権は、国税庁が定めた標準価格をもとに相続税評価額を算定し、相続税の申告書に記載する必要がありました。

しかし、携帯電話の普及に伴い固定電話を利用する人が減り、電話加入権の価値は値下がりしています。

国税庁が定めた電話加入権の標準価格は、2014年以降ずっと「全国一律で1,500円(特殊な番号を除く)」でした。

このように低額であるにも関わらず、電話加入権は相続税の申告書に個別に記載しなければならなかったのです。

電話加入権の市場価値が下がり、わざわざ個別に評価する必要性が薄れたため、評価方法が見直されました。2021年1月1日以降に親から電話加入権を受け継いだ分については、従来とは異なる評価方法になっています。

電話加入権は「家庭用財産」にまとめられる

電話加入権は、今までは個別に評価・申告する必要がありましたが、2021年より評価方法が見直しされました。

家庭用財産に含めて一括評価

2021年1月1日以降の相続において、電話加入権は個別評価ではなく、家庭用動産(家庭用財産)に含めて一括評価して申告してよいことになりました。

先ほどお伝えしたとおり、電話加入権の価値はどう高く見積もっても数千円です。そのため、相続税の申告にあたり評価額を厳密に区分する必要性は低いとされたのです。電話加入権は「家庭用財産」に含めて、まとめて評価することになります。

家庭用動産(家庭用財産)とは

家庭用財産とは、被相続人(亡くなった人)が家庭で所有していた不動産以外のものの総称です。

家庭用財産の代表的なものとしては、家具や家電、衣服などが挙げられます。中古の家具や家電などをひとつひとつ評価するのは非常に手間がかかり、現実的ではありません。

そこで、1個または1組の価額が5万円以下の家庭用財産は、ひとまとめに「家財一式」として評価します。この家財一式の中に、電話加入権も含めることになります。

相続を放棄するつもりなら勝手に手続きしない

相続放棄を検討している場合は、むやみに電話加入権の解約手続きや料金の支払いをしないようにしましょう。

手続きすると相続放棄できなくなることも

電話加入権の解約や休止手続きをしたり、未払い分の料金を支払ったりしてしまうと、相続を単純承認したとみなされ、相続放棄できなくなってしまいます。

相続放棄とは

相続放棄とは、その名のとおり、相続する権利を放棄することです。

相続が発生(親が亡くなるなど)した際、必ず相続しなければならないというわけではありません。相続するかしないか、また、相続するとしても、財産をすべて相続するのか、一部のみを相続するのかを選ぶことができるのです。ただし、どの方法にするかを選ぶと、それ以降、他の方法に変更することはできません。

単純承認とは

財産をすべて相続するというのは、借金などマイナスの財産も含めてすべて引き継ぐということになります。これを「単純承認」といいます。

故人の財産について何らかの変更や処分をすると、単純承認したとみなされます。電話加入権は相続財産なので、解約や休止手続き、未払い分の料金を支払いなどをしてしまうと、単純承認したとみなされる可能性があります。

後になって、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが大きかったことが分かり相続放棄をしたいと思っても、一度単純承認してしまうと、相続放棄することはできません。相続放棄を検討しているのであれば、むやみに手続きをしたり料金を支払ったりしないほうがいいでしょう。

ななのひとこと・ふたこと

総務省の情報通信白書(令和4年)によると、スマホを所有している世帯は90.1%、固定電話を所有している世帯は63.9%だそうです。なんだかんだ言っても、固定電話を所有している家庭はまだ6割超あるんですね。