「介護保険の対象者ってどんな人?」「保険料はいつから払うの?」「介護保険って、そもそも何?」そんな方も多いのではないでしょうか。
介護保険とはなにか、介護保険制度のしくみや介護保険を利用するための手続きなどについて解説します。
介護保険制度とは
介護保険は、高齢者(介護を必要とする人)を社会全体で支えるためにつくられた公的な制度です。高齢化や核家族化の進行、介護離職者の増加などを背景に、2000年に創設されました。
介護保険制度の仕組み
介護保険は、介護や支援が必要な方(要介護者・要支援者)が、介護費用の全額を負担することなくサポートを受けられる制度です。
実際にかかる費用の1~3割の負担(支払い)で、介護に関わる各種サービスを利用できます。残りの7~9割は公費(税金と介護保険料)でまかなわれる仕組みになっています。
介護保険料は、介護保険制度により、40歳から支払うことが国民に義務付けられています。
介護保険は国の制度ですが、運営は全国の市区町村が行っています。
介護保険制度の半分は税金と保険料でまかなわれている
高齢者や要介護者の数が急速に増えており、介護保険料だけでは介護保険制度を維持することができません。そのため、介護保険の財源のうち、50%は税金が投入されています。
介護保険のサービスを利用した際の費用は、原則として1~3割を利用者が負担し、残りの7〜9割は公費負担となっています。つまり、介護サービス費用の自己負担分を超える金額については、介護保険料と税金でまかなわれていることになります。
介護保険サービスの自己負担割合は前年の所得に応じて決まります。原則として1割ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割になります。
介護保険制度の対象になる人
介護保険制度の対象になるのはどんな人でしょうか?
介護保険料は何歳から支払う?
介護保険制度に基づき、40歳から介護保険へ加入することが国民に義務付けられています。加入とともに、介護保険料の支払い義務も発生します。つまり、40歳になると介護保険料を支払うことになります。
なお、加入は任意でなく国民の義務です。自分の意思で脱退することはできません。
介護保険の対象者には2つの区分がある
介護保険の被保険者の種類は、年齢によって「第1号被保険者」と「第2号被保険者」に分けられます。
第1号被保険者は、65歳以上の方です。原因を問わずに要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
第2号被保険者は 、40歳から64歳までで、健保組合、全国健康保険協会、国保などの医療保険に加入している方です。加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
40歳になると介護保険の対象者となり、65 歳になるときに自動的に第1号被保険者に切り替わります。
どちらの被保険者も保険料を納める義務があります。
何歳から保険料を支払うのかは、それぞれ以下の通りです。
- 第1号被保険者…65歳になった月から
- 第2号被保険者…40歳になった月から
介護保険サービスを利用できるのは
- 原則:第1号被保険者(65歳以上の方)
- 例外:老化に起因する特定疾病により介護認定を受けた場合は、第2号被保険者(40~64歳)でも利用できる
介護保険料はその人の状況によって変わる
毎月支払う介護保険料の計算方法は、第1号被保険者と第2号被保険者で異なります。
第1号被保険者の場合
介護保険料は市町村ごとに定められた基準額あるいは本人や世帯の所得状況にもとづいて算出され、全額自己負担です。介護サービスに必要とされるコストが自治体それぞれで違うので、基準額は自治体ごとに異なります。
年金の年間受け取り額が18万円以上の人は、基本的に年金から介護保険料が天引きされます。ただし、希望すれば、納付書振込や口座振替で保険料を支払うこともでき、口座振替か納付書振込のどちらにするかは、被保険者が決められます。
第2号被保険者の場合
介護保険料は、会社員の場合、月々の給与とボーナス(賞与)に介護保険料率を掛けて求めます。保険料は会社と折半するので、実際に支払う介護保険料は半分となります。介護保険料は健康保険料と一緒に給料から天引きされます。
ただし、自営業の場合は会社員と違い、介護保険料は全額自己負担です。国民健康保険料と同時に介護保険料を納めます。
介護保険で利用できる主なサービス
介護保険で受けられるサービスにはどのようなものがありますか?
介護保険サービスはさまざまな種類がある
介護保険サービスにはさまざまな種類のものがあり、例えば以下のようなサービスが挙げられます。
自宅で利用するサービス
- ホームヘルパーが、入浴、 排せつ、食事などの介護や調理、洗濯、掃除 等の家事を行う「訪問介護」
- 看護師等が 清潔ケアや排せつケアなどの日常生活の援助 や、医師の指示のもと必要な医療の提供を行う「訪問看護」
日帰りで施設等を利用するサービス
- 日帰りで食事や入浴などの支援、リハビリなどを受ける
宿泊するサービス
- 施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練の支援などを受ける
施設系サービス
- 特別養護老人ホームなどに入居する
介護保険の利用には手続きが必要
介護保険を利用したい場合、どんな手続きが必要なのですか?
生活状況や要介護度などに応じて適切な手順を踏む必要があります。
手続きの流れ①
まず大前提として、要支援または要介護の認定を受けていないと、介護保険サービスを利用することはできません。介護保険サービスは、要支援または要介護の認定を受けた方のみが受けられるものだからです。
要支援または要介護の認定を受けるために、まずは認定調査を受けたい旨の申請を出しましょう。
申請書の提出先は、各市区町村の担当窓口または地域包括支援センターです。なお、申請の際には、介護保険の加入者に支給される「介護保険の被保険証」が必要となります。
手続きの流れ②
市区町村の職員などの認定調査員が自宅を訪問し、心身の状況について本人や家族から聞き取りなどの調査をします。認定調査の結果と主治医の意見書をもとに、どのくらいの介護が必要かの判定を受けます。
手続きの流れ③
原則として申請から 30 日以内に、市区町村から認定結果が通知されます。
手続きの流れ④
要支援・要介護認定を受けたら、地域包括支援センターまたはケアマネジャーに相談し、ケアプランを作成します。介護サービスは、ケアプランに基づいて受けることができます。
民間の介護保険とは
これまでご説明してきたのは、介護保険制度に基づく公的な介護保険です。公的な介護保険とは別に、民間企業が提供する介護保険もあります。
公的介護保険と民間の介護保険の違い
最大の違いは、公的介護保険が「現物支給(介護サービス)」であるのに対して、民間介護保険は「お金」が支給される点です。要介護認定などを受ける必要はなく、要件を満たせば介護費用として所定の現金を受け取ることができます。
また、40歳になったら強制的に加入する公的な介護保険と違い、民間の介護保険には年齢の制限がありません。任意でいつでも加入できます。
民間の介護保険のメリットとデメリット
民間の介護保険に加入するメリットは、現金を受け取れる点です。
民間保険とは公的な介護保険を補うことを目的にしています。公的介護保険の対象にあたらない方でも、契約内容の要件を満たせば介護資金の一部として現金を受け取れます。
デメリットとしては、公的介護保険の保険料に加えてさらに民間保険の保険料を支払う必要があることです。
ななのひとこと・ふたこと
介護保険は、介護の必要な方とそのご家族が安心して生活できるようにするための社会保険制度です。世の中の実情に合わせて、原則として3年ごとに見直し・改正が行われています。
介護保険は、その仕組みや利用方法が複雑で、なかなかわかりにくい点があるのは確かですが、制度について概要だけでも知っておくことは決して無駄ではありません。