遺産がいくらあると相続税を払わなければいけないの?

制度・法律

親が亡くなってその財産を引き継ぐ場合、相続税がかかることがあります。ただし、必ず税金が発生するわけではありません。では、遺産がどれくらいあると相続税がかかるのでしょうか?

そもそも相続税ってどんな税金?

相続税は、親などが亡くなってその財産(預貯金や不動産など)を受け継いだ場合に、その財産に対してかかる税金です。遺産の価額が高くなるほど税率も上がる仕組みになっています。相続税の税率は、遺産額に応じて段階的に高くなり、最低でも10%、最高で55%にもなります。

ただし、相続税の金額を求めるには、遺産額にそのまま税率をかければいいというわけではなく、複雑な計算が必要です。

亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐほうの人を「相続人」といいます。
相続人は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は、被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に税務署に相続税の申告書を提出しなければいけません。例えば、5月20日に亡くなった場合には翌年3月20日が提出期限になります。

遺産が一定額以下であれば相続税を払う必要はない

相続税は、遺産に対してかかる税金ですが、財産を相続したからといって必ずかかるというわけではありません。

遺産額が、ある一定の金額を上回る場合にのみ相続税がかかります。この一定の金額のことを「基礎控除額」といい、遺産額から差し引くことができるのです。つまり、遺産額よりも基礎控除額のほうが大きければ、相続税はかからない(=払う必要がない)ということになります。

基礎控除額は【 3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )】で計算します。法定相続人というのは、民法という法律で定められた、相続人になれる人のことをいいます。通常は、亡くなった人の配偶者や子ども、父母などです。

例えば、法定相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円( = 3,000万円 +( 600万円 × 1人 ))です。そのため、遺産額が3,600万円より少なれけば相続税はかかりません。申告書の提出も不要です。

基礎控除額は以前に比べて下がった

実は、この基礎控除額は2015年(平成27年)1月に引き下げられました。引き下げられる前の基礎控除額は【 5,000万円 +( 1,000万円 × 法定相続人の数)】だったのです。

法定相続人が1人だとすると基礎控除額は6,000万円で、現在より2,400万円も高かったことになります。基礎控除額が高いということは、相続税がかかる最低ラインも高いということです。例えば、遺産額が5,000万円だとすると、現在では相続税がかかりますが、2014年12月31日までなら相続税を払わなくて済んだというわけです。

相続税がかかる財産の価格を減らせる制度もある

例えば地価の高い場所に親が自宅の土地を持っていて、その土地を相続すると高額な相続税が発生するというケースもあるでしょう。
相続税は税率も高く、仮に相続税がかかるとなると負担が大きくなりがちな税金であるといえます。相続税を払うために自宅を手放さざるを得ないといった話を聞くこともあります。相続人が生活の基盤を失う可能性もあるわけです。

そのため、税金の負担を減らすための特例や控除などの制度が設けられています。遺産額が基礎控除額を超える場合であっても、こうした特例や控除制度を利用して、相続税を減額したり納税額をゼロにできる場合もあります。

相続税を払っている人はどれくらいいる?

では、実際にどれくらいの割合の人が相続税を払っているのでしょうか。
国税庁が公表しているデータによると、2021年に亡くなった人の総数に対して相続税が発生した割合(これを「課税割合」といいます)は9.3%です。つまり、亡くなった人(被相続人)100人のうち約9人に相続税がかかっているということになります。

ちなみに、相続税の基礎控除額が引き下げられる以前の課税割合は、おおむね4%台で推移していました。基礎控除が引き下げられたことによって相続税を払わなければならない人が倍増したといえるでしょう。

相続税の課税割合の推移

画像引用元:国税庁(令和3年分 相続税の申告事績の概要

ななのひとこと・ふたこと

母が亡くなってその旨を銀行に連絡した際、電話越しに担当者から「相続のご発生ですね」と言われました。言われてみればたしかにそうなのですが、その時初めて、「あぁ、そうか。これが相続なのか」などと思いました。