昨年後半は肺炎と骨折で4つの病院に入院しました。認知症の人は、相手の態度に敏感に反応すると言われていますが、この入院を通して、それを痛感しました。
認知症の人は、普段と環境が変わると混乱します。
また、周囲の人の接し方によっても敏感に反応します。こちらが穏やかな態度で接すれば本人も穏やかでいられることが多いのですが、ぞんざいに扱ったり、不機嫌な態度で接すると、本人にも必ず伝わります。
骨折が治るまでは数ヶ月かかる
肺炎は10日ほどの入院で済んだのですが、圧迫骨折が治るまでは数ヶ月かかると言われました。
ただ、ベッドに寝たままでは足腰が弱ってしまいます。
救急車で運ばれた病院にはリハビリをする施設はありませんから、2週間ほどしたら別のリハビリ病院へ転院する予定になっていました。
救急で入った病院は、忙しいからなのか患者に対してかなりぞんざいな態度をとる看護師が多いように感じました。
母はそれを敏感に感じ取っていたようです。ほぼ毎日お見舞いに行っていたのですが、毎回必ず、「ここにいたくない。早く家に帰りたい。」と私に訴えました。
母を不憫に思いつつも、まだ歩くこともままならない母を家に連れて帰ることはできず、いつも後ろ髪を引かれる思いでひとりで家に帰っていました。
肺炎で入院していた病院ではあまりそんなことは言わなかったのに、なぜ今回は?と不思議に思いましたが、理由はほどなくして分かりました。
そんな態度ってある!?
翌週水曜日にはリハビリ病院に転院できる、という目途がついた金曜日の夜のことです。
いつものように会社帰りに病院に行きました。額に手をあてるとなんとなく熱っぽいように感じたので、看護師に聞いたところ、驚くような返事が返ってきました。
「さっきまで騒いで興奮していたからじゃないですか。」と不機嫌そうに言い、様子をみようともしませんでした。
認知症の人は感情を表にストレートに出すことが多いので、母も「家に帰りたい」などと病室で声をあらげることが何度かあったようです。
その点では、たしかに、他の患者さんや看護師に対して迷惑をかけていたのかもしれません。それにしてもその状態を助長しているのは看護師自身の対応です。
怒りと悲しみが爆発寸前に
私のなかで怒りと悲しみが頂点に達しました。もうこんなところに母をひとりで置いておくことはできない、と思いました。
でもここで感情的になっても、母にとって何もいいことはありませんから、できるだけ冷静に言いました。
「来週にはリハビリ病院に行きますし、今週末は外泊させていただけませんか?母も家に帰りたがっていますし、また興奮して、病院にご迷惑をかけるのも申し訳ないですから。」
当直の医師に確認してもらい、「とりあえず一泊の外泊許可という形にするが、本人が大丈夫そうであればそのまま退院しても良い。」と言われました。
「わかりました。ありがとうございます。」と表面上は言ったものの、心の中では「もう二度とこんなところには戻ってこないよ。」と思い、結局、その救急病院はそのまま退院しました。
認知症の人は、相手の態度に敏感に反応します
自分自身が身をもって痛感していることですが、認知症の人は、相手の態度に敏感に反応します。
接する人が笑顔なら本人も笑顔で応えるし、怒った態度で接すれば、必ず怒って返します。
自分に(精神的にも物理的にも)余裕がないと、ついぞんざいな態度を取ってしまいますが、そんな時もできるだけ笑顔で接するようにしようと再認識した入院でした。