40代50代ともなると、親の介護を身近に感じる人も多くなってきます。もし親の介護が必要になったら、費用や期間はどのくらいなのでしょうか。
介護にかかる費用と期間の平均
介護が始まると、いったいどれくらいの費用や期間がかかるのか不安に思う人も多いでしょう。
介護費用の平均は月8.3万円
生命保険文化センターが、過去3年間に介護経験がある人を対象に、どのくらい介護費用がかかったのか調査したところ、一時的な費用の合計は平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となりました。
出典:<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度>
一時的な費用というのは、介護ベッドや車いすなどの購入代金や自宅を介護リフォームする費用などです。一方、月々の費用は、主に訪問看護やヘルパーさんの利用料、デイサービスなどの介護施設へ通う費用になります。
それぞれの内訳をみてみると、一時的な費用の平均は74万円ですが、「かかった費用はない」が15.8%、「15万円未満」が18.6%と、金額がそれほど高くない人も少なくありません。
また、月々の費用の平均は8.3万円ですが、ばらつきもあります。「0~2.5万円未満」が19.6%いる一方で、「15万円以上」という人も16.3%います。人によって、介護費用にかなりの差があることがわかります。
なお、介護を行った場所別の月額介護費用は、在宅介護では平均4.8万円、老人ホームなどの施設介護では平均12.2万円となっています。
介護期間は平均5年1か月
介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1か月(5年1か月)です。4年を超えて介護した人も約5割となっています。
介護期間については、「4-10年未満」と答えた人が31.5%と最も多く、4年を超えて介護した人は約5割にのぼります。「10年以上」と回答した人も17.6%います。
また、介護期間の平均は、2021年度の調査では61.1ヵ月(5年1ヵ月)でしたが、前回2018年度の調査では54.5ヵ月(4年7ヵ月)でした。介護期間の平均は、3年前の調査よりも半年以上長期化していることがわかります。
介護費用に差が出るのはなぜ?
これらの調査結果から分かることは、介護費用は人によってかなりばらつきがあるということです。費用に差が出る理由は、主に2つあります。
介護される人の状態で費用が変わる
ひとつ目の理由は「要介護度の違い」です。
要介護度は「要支援1、2」「要介護1〜5」の7段階に分かれており、一般的に介護度が重くなるにつれ、自分でできることが少なくなります。
そのため、食事、入浴、洗濯、掃除、体のケアなど生活のあらゆることに対して介護サービスが必要になり、介護にかかる費用は介護度に比例して上がっていきます。
月額の介護費用を要介護度別に調べた調査では、要支援1の月額平均は4.1万円ですが、要介護5では10.6万円となっています。
介護する場所の違いにより費用が変わる
ふたつ目は「介護をする場所の違い」です。
在宅介護では月7.5万円未満が全体の約6割を占め、平均費用は4.8万円です。それに対し施設介護は、月10万円以上が全体の約6割、平均費用は12.2万円となっています。
在宅介護の場合は、訪問看護やデイサービス、配食サービスなどの利用料のほか、紙おむつなどの介護関連品の購入や医療費、医療機関への交通費など、介護そのものにかかる費用が一般的な支出になります。
一方、施設介護の場合は、介護そのものにかかる費用のほかに、住居費や食費が加わるため、金額が高くなります。
あくまでも平均値に過ぎない
調査結果をもとに計算すると、介護にかかる平均総額は「一時費用74万円」と「月額費用8.3万円 × 61.1か月」を合わせた約581万円となります。しかし、上記でお伝えしたとおり、介護の状態や期間、介護する場所によって、介護にかかる費用には差があるため、この金額はあくまでも平均値に過ぎないといえるでしょう。
介護者が100人いれば100通りの介護があると言われています。介護は個人差が大きいうえに、どれくらいの費用や期間におよぶのかは予測できないのです。
なお、この調査では、過去3年間に介護経験がある人を対象としており、現在介護を行っている人も含まれているため、実際の介護期間はさらに長期になる可能性も考慮したほうがよいでしょう。
ななのひとこと・ふたこと
正直なところ、介護は、始まってみないと何が起きてどれくらいお金がかかるのか、いつまで続くのかがわかりにくいです。
介護費用と介護期間の平均はあくまでも目安でしかありません。とはいえ、それを参考にして心づもりをしたり、親と話し合ったりしておけると少しは不安も和らぐかもしれません。
親の貯金や年金で介護費用がまかなえるのか、また、介護が必要になった際にどのような介護を希望するのか、できれば親が元気なうちに聞いてみたいところですが、実際にはなかなか聞きにくい話題ではありますよね・・・。