介護離職って、本当に「絶対に」しちゃダメなの?

自分のこと

介護と仕事の両立について語られるとき、必ずと言っていいほど「介護離職は絶対にしてはいけない」といわれます。(この場合、転職も含まれていることが多いです)

果たして本当にそうなのでしょうか?
だとすると、その理由はなんでしょうか?

「介護離職は絶対にしてはいけない」と聞くたびに、なんとなく違和感を感じます。

「絶対に?」「本当にダメ?」

状況によっては離職したっていいよね?と思うのです。

介護離職をしてはいけない理由

「介護離職をしてはいけない」といわれる理由は大きくふたつあると思います。

給料という安定的な収入がなくなる

経済的基盤が失われることにより、生活はいずれ困窮します。親の財産や年金をあてにできるなら話は別ですが、そういう人はそんなに多くないはずです。

社会との接点が少なくなる

会社勤めをしていれば、上司や同僚、取引先などと会話をし、コミュニケーションを図れます。成果をあげることで仕事に対する達成感ややり甲斐を得られます。
給料(お金)というわかりやすい対価を得ることで、社会に貢献しているという実感も感じやすいでしょう。

私が介護うつを脱した、ひとつの要因

介護初期の頃、母のもの盗られ妄想に悩んで介護うつっぽくなって何をする気力も起きなかったとき。
友だちと会う気力も、仕事帰りや休日にどこかに遊びに行く気力もなく、毎日自宅と会社の往復のみ、という日が続きました。

会社に行くことも億劫でしたが、働かなければ生活できない、という切迫感で、どうにか毎日会社に行っていました。

今にして思うと、初期の介護うつを脱するには、これが良かったんだと思います。
職場に行って仕事をすれば、母に責められて感じるつらい思いを、多少なりとも紛らわせることができました。

会社に行けば行ったで、煩わしい人間関係に悩まされるなど、嫌なことももちろんあります。

それでも、否が応でも行かなければならない場所があり、外へ出て誰かと話しをすることで、気分転換になります。

介護離職によるリスク

育児休暇を取得している友だちが以前言っていました。
「ダンナさんが仕事から帰ってくるのを毎日心待ちにしている。普通に誰かと会話がしたい。赤ちゃんは可愛いけど泣いてばかりでノイローゼになりそう。たとえ理不尽な上司であっても、会話は成り立つからまだマシ」

それを聞いた当時、私は友だちがそう感じるのを理解できませんでした。
でも今ならなんとなくわかります。

介護に専念するために会社を辞めて、一日中家に閉じこもって介護をしていれば、精神的に追い詰められてしまうでしょう。
介護離職でこわいのは、社会との接点がなくなって視野が狭くなるリスクが高まることです。

状況によって働き方を変える

冒頭の質問に戻ります。
介護離職は絶対にしてはいけないのでしょうか?

私は、介護離職は絶対にしてはいけないとは思いません。

今までの話と矛盾するかもしれませんが、社会的接点を持つのは必ずしも(今の)会社でなくてもいいはずです。

私は会社に毎日行くことで気持ちを切り替えることができました。でも、今の職場で介護に理解が得られないとか、両立が難しいと感じるのであれば、長い人生の間には、介護のために仕事をセーブする期間を設けたり、別の仕事をやってみるのもいいのかな、と思います。

離職して、いったん現状とは違う状況に身を置いてみたら、もしかしたら今よりもっと自分の適性に合った仕事を見つけられる可能性だってあるわけです。

やってみないとわかりません。
だから「絶対に」なんて言い切るのはおかしいです。
そもそも、ものごとに「絶対」なんてありえないですよね。

裏を返せば、収入の見込みがあって(←これが一番難しいのですが)、社会的な接点を持てるのなら、今の職を離れて別の仕事をするという選択肢もあり得るのです。
もちろん、現状に不満や閉塞感がなければ、あえて離職する必要はありません。

ななのひとこと・ふたこと

何が何でもずっとひとつの会社にしがみついていなければいけない理由なんてないはずです。
終身雇用なんてとっくに崩壊しているし、どんな大企業でも経営が傾くリスクはあります。