札幌の納骨堂閉鎖はなぜ起きた?納骨堂を選ぶ際に気をつけるべきこと

制度・法律

昨年、運営する宗教法人の経営破綻により札幌市にある納骨堂が競売にかけられ、契約者が遺骨の引き取りを要求されたというニュースを見て驚いた方も多いのではないでしょうか。

被害を受けられたご契約者の方たちの心痛を思うと、やるせない気持ちになります。私自身、改装先のひとつとして納骨堂を検討しているので、他人事ではないと身につまされました。

そこで、札幌の納骨堂閉鎖の問題点と、納骨堂を選ぶ際の留意点をまとめてみました。

札幌の納骨堂が経営破綻して閉鎖された

札幌にある納骨堂はなぜ閉鎖されてしまったのでしょうか。そこにはさまざまな要因が絡み合っていたようです。

納骨堂の経営破綻までの経緯

札幌市東区で納骨堂「御霊(みたま)堂元町」を経営する宗教法人「白鳳寺」は、約3億円の借金を抱え、2022年に事実上経営破綻しました。

経営破綻当時、堂内には約1000体のご遺骨が納められていましたが、納骨堂は施錠されていて、お参りも遺骨の引き取りもできない状態でした。

御霊堂元町は、市内の葬儀会社などから合わせて2億円以上を借り入れて2012年に開業。「季節、天候に左右されず気軽にお参りできる」を売り文句に、納骨壇を使用できる権利を1区画30万〜250万円で販売してきました。

しかし、資金不足で借入金の返済が滞ったことから建物を差し押さえられて競売にかけられた結果、2022年8月、札幌市内の不動産会社が1億円余りで落札しました。

落札した不動産会社は、当初は裁判所に対し建物の明け渡しの強制執行を申し立てていました。

建物を明け渡すことになれば、遺骨をそのまま置いておくことはできないので、契約者は遺骨を引き取らなくてはいけません。

しかし、その後、不動産会社は納骨堂を存続させる意向を示して、11月に建物引き渡しの強制執行の取り下げを求め、裁判所がこれを認めました。ひとまず、すぐに遺骨を引き取らなければならない状況は回避されたのですが、問題はその後も続きます。

納骨堂を経営できるのは限られた団体のみ

納骨堂を経営することができるのは、法律で「地方自治体」「宗教法人」「公益法人」のみと定められています。都道府県知事または市長の許可を受けなければ、納骨堂を経営することはできないのです。

不動産会社はこうした団体に当てはまらないので、このままでは納骨堂を経営することはできません。

事業許可を与える札幌市が、不動産会社が運営することを特別に認めたのかどうか、2023年6月現在の状況について調べてみたのですが、どうなっているのかを確認することはできませんでした。

札幌の納骨堂はなぜ経営破綻したのか?

札幌の納骨堂「御霊堂元町」がなぜ経営破綻してしまったのか明確な理由はわかりませんが、さまざまな要因が重なったことは間違いないでしょう。

納骨堂の供給過多

雪国である北海道は、お墓が雪に埋もれてしまうため冬になるとお墓参りが難しくなります。そのため、屋内にあり手軽にお墓参りができる納骨堂の数は全国で2番目に多いそうです。供給過多になっている可能性も否定できません。

初期投資額が大き過ぎた

「御霊堂元町」は、北海道という地方エリアにしては規模が大きく、建設費用が高額に。多額の借金を抱えているにもかかわらず契約者数は伸び悩み、経営が悪化したと考えられます。

単立寺院が運営

特定の宗旨・宗派のグループに所属していない単立の寺院(宗教法人)が運営していました。

例えば真言宗や曹洞宗といった一般的によく知られた宗派に属した宗教法人であれば、本山や同じ宗派の寺院との連携や協力を仰ぐこともできます。遺骨を同じ宗派の寺院に預かってもらったり、同じ宗派の寺院に経営を代わってもらったりなどの支援を受けることもできるでしょう。

一方、単立寺院は運営の自由度が高いというメリットはあるものの、不測の事態が起きた場合、自力で解決しなければならないというリスクがあります。

借金の借り入れ先に問題はなかったか

仮に経営が苦しくなったとしても、納骨堂が競売にかけられるというのは異例です。通常の金融機関であれば、救済策や改善策が提示されます。過去に他の納骨堂が経営破綻したケースもありますが、納骨堂として存続できるよう救済がなされています。

推測に過ぎませんが、借り入れ先の一部に、納骨堂の持つ社会的な重要性を理解していない相手が含まれていた可能性もあったのかもしれません。

落札したのが不動産会社なのも問題の一因

「御霊堂元町」を競売で落札したのは不動産会社(株式会社)でした。

前述したとおり、納骨堂を運営することができるのは、法律で「地方自治体」「宗教法人」「公益法人」だけで、株式会社は運営できません。

経営破綻すると、別の宗教法人が運営者となって納骨堂として継続されるケースが多いので、契約者はそのまま利用することができます。しかし今回は不動産会社(株式会社)が買い取ったことで問題が大きくなっています。

経営破綻したケースは他にもある

数は多くないものの、納骨堂が経営不振により閉鎖されるケースは、全国各地で確認されています。経営破綻にまでは至らないまでも、経営譲渡が発生するケースは少なくないようです。

納骨堂を選ぶ際に気をつけるべきこと

まずは、複数の納骨堂に資料請求し、比較検討しましょう。インターネットや資料請求だけで決めるのではなく、気になるところは実際に見学をすることを強くお勧めします。

納骨堂選びのチェックポイント

  • 事業計画、修繕計画はきちんと立てられているか
  • 運営年数や契約数が事業計画に沿ってしっかりと伸びているか
  • 納骨堂の経営母体がしっかりしていて継続性があるか
  • 管理費を一括でしか支払えない場合は注意(分割払いが基本)
  • 責任者(寺院の場合は住職)と話して、疑問に思うことは率直に聞く(運営方針に納得できるか)
  • 相場に比べてあまりにも費用が安い場合も要注意(別途管理費やお布施を要求される、管理がずさんといった可能性はないか)

ななのひとこと・ふたこと

気になる施設は、実際に足を運んで見学し、管理者に話を聞いてみましょう。見学に行くと建物の豪華さや設備に目を奪われがちですが、運営方針や修繕計画などもしっかり確認することが大事だと思います。