主治医からの電話
先日、入院中の母の主治医から携帯に連絡がありました。
「今後について話をしたいので、明日病院に来てもらえますか。」
この主治医はこちらから聞かない限りなにも答えてくれないタイプなので、医師のほうから連絡が来たことに驚きました。
「え、何か病状が良くないとかそういうことなんでしょうか?」
「いえ、そういうわけではないです。」
このまま電話で聞いても答えてくれなさそうだったので、翌日病院に行くことにしました。
医師から呼ばれた際、医師は平日の夕方までしかいないので、普段は会社を早退して病院へ行きます。
「明日行きます」と言ったものの、最近仕事がたてこんでいるので、明日そんなに早く会社を出られるかな、どうやって仕事を調整しようかな、と思いました。
でも「その日は当直なので夜でも大丈夫です」と言ってもらえたので、夜8時に面談することになりました。
拘束用ミトンをしていない
8時少し前に病院に着いたので、まず母のいる病室に向かいました。夜8時頃だと母はすでに寝ていることも多いのですが、その日は起きていました。
「あら、どうしたの。久しぶりね。」
よくあることなので気になりませんが、娘が一昨日来たことを覚えていないようです。
手に拘束用ミトンをしていないことに気づきました。よく見ると点滴用のチューブが手足に刺さっていません。1日3回点滴治療を受けるので、いつもなら針を入れるチューブは刺したままなのです。どうしたのかな?
主治医からの話の内容
ほどなくして医師が来ました。ナースステーションで医師に聞いた話はこんな内容でした。
- 抗生剤の点滴治療を6週間ほど続け、経過は良好
- 今日で点滴治療はいったん終了し、明日から内服に切り替える
- 抗生剤の内服は8〜12週間ほど続ける必要がある
- ただし、化膿性脊椎炎は薬が効きにくい病気なので、経過によっては内服期間は長引く場合もある
- 内服であれば(1ヶ月に1回程度の)通院で治療できる
- ただし、点滴から内服に切り替えることによる影響や経過を見るため、少なくともあと2週間ほどは入院を続ける
わー、良かった。ようやく退院できる!と心の中で喜んでいる私に、医師はこう話を続けました。
「退院後はどうされますか?ほぼずっとベッドで寝たきりだったので、脚がかなり弱っています。リハビリはご本人が嫌がるし、普通に歩くのはもう難しいかもしれません。施設かご自宅でつきっきりの介護かのどちらかになるかと思います。」
うわー、出ました。医師の無責任な呪文。
以前の私なら、そんなことを言われたらショックで(あとでひとりになってから)泣いてしまうような発言です。
でも実はこれ、意外と根拠がない、あてにならない意見だったりすることも多いようです(後述)。
私はこう答えました。
「入院前と同じように、ショートステイを利用しながら在宅で介護します。」
寝たきり?胃ろう?
以前、圧迫骨折で約3ヶ月入院した後、「歩行は困難だから車椅子で」と言われましたが、わりとすぐに歩けるようになりました。
誤嚥性肺炎で入院したとき、「嚥下機能が低下しているからいずれ胃ろうも検討するように」言われましたが、退院後1週間ほどで普通食にしても何も問題ありませんでした。
もちろん以前そうだったから今回も絶対大丈夫、とは言えません。でも医師は大げさな(というか不安を煽る)ことを言いがちだと感じます。
いいことを言って、もしそうならなかった場合のことを恐れているからなのでしょうか。悪いことを言って、それがいい方向に向かったからといって文句をいう患者(や家族)はいませんから。
「平穏死10の条件」の著者である長尾先生が別の著書(親の「老い」を受け入れる)の中でこう述べています。
骨折入院すると、「もう寝たきりですね」と無責任に呪文をかける入院先のお医者さんは意外に多いのです。
その後に、「もう自宅介護が無理でしたら、寝たきりの人を受け入れてくれる施設(特養や介護療養型医療施設など)を紹介しますよ」となります。
ここで、言われるままに施設入所を選ぶか、それともリハビリ病院に転院するかが運命の分かれ道。「もう寝たきり」と言われた人も、リハビリを経て自宅に戻り、歩けるところまで復帰できている人はいくらでもいます。「もう食べられない」という呪文も同じこと。
それは、病院だから時間内に食べられないというだけかもしれません。家に帰って、自分の好きな物を1時間も2時間もかけてゆーっくり、ゆーっくり食べられるようになる人はたくさんいます。諦めてはいけません。親の「老い」を受け入れる p.79〜80より引用
ななのひとこと・ふたこと
長尾和宏医師と丸尾多恵子(まるちゃん)さんの共著といえば、「ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!」が有名です。
この本もいいのですが、私が特に好きなのが上で引用した「親の「老い」を受け入れる」。私が読んだ認知症介護本のなかで、ベスト5に入るといってもいいくらい。
ひとりで考え込んで悶々としがちなときに、ぱらぱらと何度も読み返してます。そのたびに、「あ、そうか!」「こんな風に考えればいいのか」「これでいいんだ」と気づかせてくれます。