介護疲れで行き詰まってしまう人の多くは、「親を介護することは子どもの義務だ」とか「他人が面倒を見るよりも自分が介護した方が親も喜ぶはず」と考えてしまいがちです。
でも、介護を「自分だけで」「家族だけで」頑張ろうとしないでください。介護はいつまで続くか見通しが立ちません。自分が無理をしては続かないのです。無理なく介護を続けるために、介護サービスを積極的に利用しましょう。
介護サービスに対する誤解
介護サービスの利用をためらうのはなぜでしょうか?もしかすると、そこには介護サービスに対する誤解や勘違いがあるかもしれません。
高額な費用がかかるという誤解
介護サービスには、自己負担が必要なものもありますが、介護保険や市区町村の介護支援事業など、利用者にとって負担の少ない制度が用意されています。
自宅に他人が入ることへの抵抗感
訪問介護サービスでは、訪問介護員(ホームヘルパー)が介護を必要とする人の自宅を訪ね、日常生活をサポートします。そのため、他人が自宅に入ることに不快感を覚えることもあるかもしれません。
しかし、利用者のプライバシーや個人情報は適切に取り扱わなければならないと、厚生労働省のガイドラインで義務付けられています。
質が低い介護サービスがあるのではないかという不安
介護サービスは、国や自治体の厳しい基準に基づいて運営されています。介護サービスを提供する事業者には、利用者の安全や要望に応えるための人員や設備の充実が求められており、定期的な監査や評価も行われています。
周りのサポートを受ける
介護のために仕事やプライベートの時間を削ると、ストレスや疲れがたまり、介護を続けることが難しくなってしまいます。
精神的にも身体的にもつらくてどうしようもない状態になる前に、周りのサポートを上手に受けるようにしてください。
介護保険サービスを利用する
介護保険で受けられるサービスの利用を検討してみましょう。
介護保険サービスにはさまざまな種類があります。ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
訪問サービス
自宅で買い物や掃除などの生活支援、食事や排せつなどの介護を受けられます。
通所サービス
自宅から施設に通うかたちで日中を過ごします。施設で、食事や排せつなどの介護、リハビリや入浴などのサービスを利用できます。
短期入所サービス
短期間入所してもらい、入浴、排泄、食事などの介護や日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスです。
一定期間、施設で過ごしてもらい、食事や入浴、排せつなどの介護、日常生活上の世話及び機能訓練などのサービスを受けます。
施設サービス
介護保険が適用される施設サービスには「特養(特別養護老人ホーム)」「老健(介護老人保健施設)」「介護療養型医療施設」「介護医療院」という4種類があります。食事・排泄・入浴などの介護やリハビリなどを月額定額で受けることができます。
国が定めた支援制度を活用する
「働く人の仕事と介護の両立」のために、法律(育児・介護休業法)で定められたさまざまな支援制度があります。
介護休業
介護を必要とする家族1人につき通算 93 日まで、3回を上限として、介護のためのお休みを取得できます。
給料の約2/3にあたる給付金を受け取りながら仕事を休めるため、経済的な負担を軽減できます。
介護休暇
介護を必要とする家族1人につき年に 5 日まで、2 人以上であれば年に 10 日まで、1日単位や時間単位でお休みできます。当日の申請も可能なので、介護に関して突発的なことが起きても対応できるのがメリットです。
所定労働時間の短縮等の措置
1日や1週間、1月の所定労働時間の短縮や、時差出勤、フレックスタイム制度を設けることなどが、会社に義務付けられています。
所定外労働の免除
法定時間外労働の制限 1ヶ月に 24 時間、1 年に 150 時間を超える時間外労働が免除されます。
深夜業の制限
深夜業(午後 10 時から午前 5 時までの労働)が免除されます。
勤務先に相談してみる
勤務時間の短縮やリモートワークなどを利用できないか、職場に相談してみましょう。
近年はフレックスタイムを導入していたり、在宅勤務に対応していたりする企業も増えてきています。
周囲に相談する
介護は、自分ひとりで抱え込まないようにすることがとても重要です。
家族や専門家に相談してみましょう。頼れる家族や兄弟などがいない場合、まずは「地域包括支援センター」に相談してみてください。
地域包括支援センターとは、高齢者の介護・医療・福祉などに関して総合的に支援してくれる相談窓口です。利用料は無料で、まだ介護が始まっていなくても相談に乗ってくれます。
そのほか、市区町村の役所でも相談を受け付けています。介護認定を受けている場合は、ケアマネジャーに相談するのがいいでしょう。
介護サービスを利用することのメリット
介護サービスには、介護負担の軽減や、自分自身の時間を確保することができるなどのメリットがあります。
介護そのものの負担が軽減される
介護にかかる時間や労力を減らせます。
介護サービスを利用している時間は、身体を休めることができます。
自分自身のストレスを緩和できる
自分自身の時間を取れるようになるので、趣味にも充てることができます。
介護ストレスが軽減され、心身の健康につながります。
介護者に優しく接することができる
介護サービスを利用することで、自分自身の心に余裕が生まれるので、イライラすることも減ります。介護を受ける人(親)にも優しく接することができるでしょう。
ななのひとこと・ふたこと
介護は先の見通しが立ちにくいです。上手に長続きさせるためには、ひとりで抱えこまず、周囲の人に頼ることがとても大切です。介護サービスの利用に抵抗を感じる場合は、周囲の人に相談してみましょう。
他人に頼ることは決して後ろめたいことではありません。
介護者のストレスが軽減されて身体的にも精神的にも穏やかでいられれば、介護を受ける人にもいつもより余裕を持って接することができます。第三者の手を借りることに、初めは少し抵抗があるかもしれませんが、むしろ、より良い介護ができる、大きな力になってくれる存在なのです。