お寺や墓地の運営会社が倒産したら、お墓はどうなるの?

制度・法律

2022年、札幌にある納骨堂の経営破綻したニュースを見て驚いた人も多いと思います。お寺や墓地が倒産することってそんなにあるのでしょうか?倒産してしまったらお墓はどうなるのでしょうか?

墓地を経営できるのは自治体・宗教法人・公益法人のみ

一般の民間企業は墓地を経営できない

墓地はその性質上、経営破たんがあってはならないため、永続性や非営利性が求められます。そのため、墓地や納骨堂を経営できるのは、自治体や宗教法人、公益法人に限られており、経営するには都道府県知事などの許可を得る必要があります。一般の民間企業は墓地を経営することはできません。

名義貸しは禁止されている

ところが、宗教法人の名前で経営許可を取っていながら、実態は石材店や開発業者などの民間企業が経営主体となっているケースがあります。
収益のほとんどを民間企業側が受け取っている場合、いわゆる名義貸しにあたり、墓地の経営許可取消しの対象になります。

どこの宗派にも属さない単立宗教法人に注意

どこの宗派にも属していない宗教法人を単立宗教法人といいます。
後継者がいなかったり、もし仮にその法人が経営難に陥ったりした場合、宗門に属していればその寺院を存続させるために、本山や同じ宗門の寺院からの協力を得られます。

しかし、単立で宗派に属していない場合は宗門からのバックアップが受けられないため、売買の対象となったり、放置される恐れがあります。そこにお墓を建てたり、納骨してしまったりしたら大変なことになります。

お寺や墓地が倒産してしまうのはなぜ?

近年、お寺や墓地の倒産がしばしば話題になります。ではなぜ、お寺や墓地が倒産してしまうのでしょうか?

お寺のお金事情は厳しい

お寺は宗教法人で税金が免除されている、多額のお布施をもらっているというイメージがあるかもしれません。しかし実態は、経営が困難になっているお寺も少なくないのです。

お寺は檀家によって経済的に支えられてきました。ところが、少子高齢化で日本の人口が減っていることに加え、檀家制度自体に疑問を感じる人も増え、檀家離れが加速しています。檀家が減ればお布施も比例して減少します。

また、墓地経営も厳しさを増しているのが現状です。墓地を造成しても、予想に反して利用者が増えず、資金繰りに苦しむこともあるようです。永代供養を希望してお墓を建てない人やお墓の承継が難しいので墓じまいする人が増えていることも、お寺の経済状況を厳しくする一因といえるでしょう。

このように経営状況の苦しいお寺は後継者を見つけることも難しくなります。

お寺や墓地が倒産する原因

もっとも、経済的に厳しかったとしても、お寺がそう簡単に倒産することはありません。倒産につながる多くのケースは、多額の借金(銀行などからの借入)を抱え、返済する見込みがなくなったときです。

ここ十数年の間に、大規模な納骨堂や墓地を造成するお寺が増えました。その中には、都道府県知事の墓地経営の許可を得るために、石材店や霊園管理会社などがお寺に話を持ちかけているケースも多いようです。お寺の経営に不安を感じている住職が、民間企業からの営業に乗ってしまうのも無理はないでしょう。

数億円規模の借入をして墓地や納骨堂をつくったにもかかわらず、予定していた数の申し込みがなく、いつまでも売れ残ったままになってしまうことがあります。そうすると、お寺は多額の借金を返済できず、倒産に至ります。

また、契約内容によっては、管理会社が収入のほとんどを取り分としてしまい、お寺にはお金が少額のお金しか入らず、経営不振に陥るといったケースもあるようです。

お寺が倒産したらお墓はどうなる?

お寺や墓地の運営会社が破綻して、後を引き継ぐ会社がない場合、お墓はどうなってしまうのでしょうか。

お墓は強制撤去されない

お墓は単なる記念碑ではありません。倒産したことを理由に、お墓を勝手に処分することは法律で禁止されているため、たとえお寺や墓地が倒産したとしても、お墓が強制撤去されることはありません。

メモ:墓地経営を辞める場合、都道府県知事による墓地廃止許可が必要です。また勝手にお墓を撤去しようと工事に踏み切ると、墳墓発掘罪などの刑法に触れる可能性があります。

都道府県知事による墓地廃止許可を得るには、お墓の使用者(契約者)の承諾が必要で、かつ改葬(お骨を別のところに移す)がすべて完了していなければなりません。

つまり、墓地使用者の承諾なく無断で墓地の経営を取りやめることはできず、お墓が強制撤去されることもないということです。ただし、管理が行き届かないので、自費負担での補修が必要になる可能性はあります。

お寺や墓地が倒産した後に考えられるケース

強制的にお墓は撤去されないとしても、今あるお墓や納骨堂はその後どうなってしまうのでしょうか。考えられるケースは2つあります。

新しい法人が経営を引き継いで墓地を管理する

新たに別の法人が墓地経営を引き継ぐ場合、基本的にお墓はそのまま維持できます。遺骨の取り出しやお骨を別のところに移す必要はありません。

ただし、新たに契約を結び直すことになるため、永代使用料の請求や管理費の値上げを要求される可能性があります。

墓地経営が引き継がれない場合

お寺が倒産すると、その土地は売却や競売にかけられます。そのお寺の土地を新たに取得した人が墓地経営を引き継ぐ意思がない場合、勝手に撤去されることはありませんが、さまざまな課題が生じます。

まず、大前提として、墓地として使用されていた土地は墓地以外に土地利用はできません。

例えば、新たに土地を取得した人が、墓地を更地にしてマンションを建てたいと思ったとします。ただし、そのためには都道府県知事に墓地廃止許可が必要です。そして、墓地廃止許可をもらうためには、お墓の契約者の承諾を得たうえで、既存のお墓を全て改葬する必要があります。

全てのお墓を他の墓地に改葬できれば問題ないのですが、契約者全員の同意を得ることはまず難しいでしょう。その場合、墓地は撤去されませんが、管理がなされないため荒れ果ててしまう恐れも否めません。

可能性としては少ないと思われますが、もし仮に全てのお墓を改葬できた場合、契約者は遺骨の引き取りを余儀なくされます。

倒産によるトラブルを防ぐための留意点

倒産トラブルに巻き込まれないために、次のような点に注意しましょう。

どのような法人が経営しているか

  • どういう宗派の宗教法人でどういった歴史があるのか
  • 運営している母体はどんな団体か
  • 代表者の人となり(どういう人物なのか)
  • ほかに展開している事業はあるか

宗教法人が運営しているように見せかけて、民間企業が経営主体となっているケースもあります。また、本山がどこかを示していないお寺や納骨堂は要注意です。特に単立寺院の場合は、宗門の監視もきかないため、運営が不安定になることもありえます。

ホームページやチラシ広告などを事前にチェックし、分からない点は住職や運営会社に直接聞くようにしましょう。

運営年数や契約数

お寺の歴史や墓地を運営して何年くらいか、契約数は伸びているのかも調べておきます。

永代供養料や管理費は妥当な金額か

利用に関する費用も、運営状況を知る大切な手がかりになります。永代供養料や年間管理費が相場と比較して安すぎる場合は注意しましょう。

派手な建物や過剰な広告に注意

管理事務所などがあまりに豪華だったり、テレビCMやインターネット広告が過剰ではないかチェックしましょう。無駄に費用をかけて、その分が利用料に転嫁されていることも考えられます。

ななのひとこと・ふたこと

できれば複数のお寺や霊園を見学したほうがいいです。比較検討すると、相場がわかりますし、自分の求めるものがはっきりとしてきます。