誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者に、胃ろうは不可欠ですか?胃ろうのメリットとデメリット

母の介護

母は11月から12月にかけて3週間ほど誤嚥性肺炎で入院していました。
肺炎で入院するのは4回目。過去3回は2週間程度で退院できたし、今回もそんなに大ごとには考えていませんでした。

だから、主治医の先生に呼ばれて今後の治療方針について話を聞きに行くことになったときも、軽い気持ちでした。

ところが、そんな私の気持ちとは裏腹に、先生の話はかなり重い内容でした。

  • 誤嚥性肺炎は繰り返すと薬に対する抗体ができてしまい、治りにくくなる。
  • 認知症により嚥下機能がかなり低下している。
  • 高齢者は容態が急変する可能性もゼロではない。
  • いずれ経口摂取(口から飲食すること)ができなくなる可能性もあるので、胃ろうなどの人工栄養を検討することも視野にいれるように。
  • 容態が急変したときに延命治療を行うかどうか、次回までに考えておいて欲しい。
  • 心臓マッサージをして肋骨が折れることもあるし、一度人工呼吸器をつけたら外すことはできない。寝たきりのままになることもある。

とてもショックを受けました。 高齢になるとそういうリスクと無縁ではないんだな、と思い知らされた感じです。

胃ろうとは

口から食べられない、もしくは嚥下障害があるために飲み込みが困難な人に対して、お腹に穴を開けて胃にチューブを差し込み、栄養補給するものです。
もともとはなんらかの障害があって、口から食べることができない子供のために開発された栄養法です。

昔は全身麻酔で大がかりな手術が必要だったのですが、今は局所麻酔で15分程度の手術で胃ろうが作れるようになりました。そのため、体力の落ちた高齢者でも比較的容易に胃ろうを作れるようになりました。 日本では主に高齢者の延命処置として多用されています。

胃ろうのメリットとデメリット

胃ろうにはメリットもデメリットもあります。

メリット

  • 胃ろうを造ったからといって口から食べられなくなるわけではない。訓練によって食べられるようになれば、食べる楽しみを失わずにすむ。
  • 嚥下機能が低下している場合、好きなものや食べやすいものは口から摂取し、足りない栄養は胃ろうで補うことができる。

デメリット

  • 胃ろうしたからといって誤嚥性肺炎にかからないわけではない。胃から食道、喉まで逆流し、誤嚥する可能性もある。
  • 口から食べないと唾液が減り、口の中の殺菌作用が落ちる。
  • 定期的にチューブの交換が必要。
  • 一度胃ろうを造ったからといっても外すことは可能。ただ実際には介護の現場において胃ろうがあったほうが介助の負担は少なくなることから、外そうとする努力をしないことがほとんど。
  • 喉を使わないと、嚥下機能はさらに低下する。

母の嚥下機能は回復

入院して最初の10日くらいは経口摂取はできず、ずっと点滴で栄養補給していました。その後、ムース食やとろみをつけた食事になり、退院の数日前から固形の食べ物を出されるようになりました。
幸いなことに嚥下機能はかなり回復し、退院後、家ではこれまでと同じような食事ができています。
それでもいつか口からものを食べるのが難しくなるときが来るかもしれません。認知症末期になると嚥下機能が落ちて、口から食べられなくなるからです。

口から食べられなくなったら?

動物は口からものを食べられなくなったら、いずれそのまま死を迎えるのが自然の摂理です。
同じ動物でも人間は、医療技術の発達により(胃ろうなどの)人工栄養という手段があります。
日本では誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者に、胃ろうを勧める医師が多いのが実情です。
ただ、認知症の人が胃ろうによって寿命が延びるという考えは、欧米では否定的です。

胃ろうは善か?悪か?

胃ろうを造ると、多くの高齢者は脳や胃、消化器官の機能が低下していきます。
容易になったと言っても、胃ろうを造る手術は高齢者にとっては負担になることは間違いないですし、造ったあとの管理も大変です。
でも一概に胃ろうは悪いものだとも言えません。上手く使えば本人の体力回復に役立てることもできます。

「口から食べられないということは寿命が来たということだ」と考えるか、「できるだけのことをしたい」と考えるかは人それぞれの価値観です。
胃ろうを造っても造らなくても、どちらにしても後悔や迷いは消えないのかもしれません。

日本は胃ろう大国

主治医の先生の話を聞いてから、胃ろうについて、延命治療について、自分なりにずっと考えています。

「ヘルプマン!!」は(良い意味で常識外れな)熱血介護士が主人公の漫画です。リアルな描写と漫画ならではの分かりやすさで何冊か読んだことがあります。
胃ろうがテーマになっている巻があったので今回読んでみました。胃ろうを造った認知症男性とその家族の葛藤が描かれています。

この巻で特に印象に残ったのは、このセリフ。

「”認知症”という病気より怖いのは・・・ ”この人は認知症だから”という周囲の画一的な思い込み それによりご本人は傷つき心を閉ざし生きるスイッチを切ってしまいます」
(ヘルプマン!!Vol.1 143ページより)

”認知症だから”口から食べることはできない。家族ですらそう思い込んでいたのに、大好きだったカツ丼を口にするシーンが印象的でした。

ななのひとこと・ふたこと

年をとると一年経つのが早いって本当ですね。。。
来年もどうぞよろしくお願いします。