職場でのある日のできごと
先日、職場で他部署の男性とふたりで打ち合わせをしていた時のことです。
「お母さんを介護してるんですか?」とふいに聞かれました。
母を介護していることは自分の部署の人以外にはほとんど話していません。
「なんで私が介護しているって知ってるんだろう?」と一瞬思いましたが、「あぁ、たぶん上司が話したんだな。」とすぐに気付きました。
私が急に休んだり早退することがあるので、その理解を求めるために話したんだと思います。(部下の個人情報を、わりと気軽に他人に話してしまうタイプの上司です。)
本人の許可なく言うのもどうかな、と思いますが、仕事に支障をきたすことがあるかもしれないので、まぁ仕方ないと割り切るしかありません。
「そうなんですよ。すみませんが、急に休んだり早退することもあってご迷惑かけるかもしれません。」
「チホウですか?」
えっ?
チホウ・・・?
地方?・・・「遠距離介護してるのか」って聞いてるのかな?
いや、違うな。「痴呆ですか?」って聞いてるんだ。
彼は悪気があって聞いたんじゃないのは、彼の普段の性格からして明らかでした。だから怒りや悲しみの感情は起きなかったのですが、なんと答えていいのか少し迷ってしまいました。
そんな風に介護についてストレートに聞かれたことはこれまであまりなかったから、ちょっと戸惑ったせいもあるかもしれません。
「痴呆」という言葉
「痴呆」という呼び方は差別用語だとして、2004年に厚生労働省が「認知症」という呼び方を推奨するようになりました。
私のように、認知症の家族がいると、通常、「痴呆」という言葉は使いません。
ただ、その彼に「痴呆って言葉は今は使わず、認知症っていうんですよ。」とあえて指摘するのもなんとなく憚られる気がしました。
だから「うーん、まあそんな感じですね。」なんて言葉を濁してしまいました。
その男性は30代前半で、奥さんのお祖母さんが認知症だそうです。
「暴言や暴力がひどいので施設にいる」と話してくれました。
その彼にとっては、たぶんほとんど会うことのない義理の祖母です。家庭の事情はさまざまだし、私がどうこう言うのも変だから、何か言うつもりもないです。
ただ、周囲の接し方によっては暴言や暴力がおさまることはあるんだよなー、とは思いました。
ななのひとこと・ふたこと
自分が普通に使っている「認知症」っていう呼称はまだまだ一般的ではないのかもしれません。自分にとっての普通や常識は、他の人にとっては非常識だというのはよくあることです。
どちらが正しいとか正しくない、とかではなく、「いろんなものの見方や考え方があって当然」だということは常に意識しないとな、と思います。