新型コロナウイルスの発生から3年余り。5月8日から、感染法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられました。
” 当たり前だった日常 ” を取り戻した喜び
施設によっても対応は異なるのでしょうが、昨日の朝に見たテレビニュースでは、面会制限を解除して部屋の中で面会できるようになった老人ホームの様子が紹介されていました。母親がホームに入居しているという女性は、久しぶりに会うお母さんの手を取り、「こうしてまた会えたことがすごく嬉しい」と涙を流して喜んでいました。見ている私も、朝から思わずもらい泣きです。
もちろん、5類になっても当面は面会制限を続ける高齢者施設も少なくないでしょう。いくら軽症化したとはいえ、コロナは高齢者にとってまだまだリスクの高い感染症です。
面会制限を続けるほうが安心であることは間違いありません。それでもやっぱり、面と向かって直接顔を合わせて声をかけ、スキンシップができるのは、高齢者ご本人にとってはもちろんのこと、家族にとってもかけがえのない大切なことだと思います。
コロナ禍での面会制限
母が特養に入所したのは2020年の11月で、コロナ禍の最中でした。そのため、入所当時から面会制限がされていて、面会には電話での事前予約が必要。もちろん部屋を訪れることはできず、施設の1階にあるロビーでアクリルシート越しに10分程度、頻度は週1回まで、という状況でした。
アクリルシート越しなので、当然ながら母に触れたり、手をさすったりすることはできません。声だって、くぐもってしまってよく聞こえません。
「このシートさえなければ、母の横に座って、母に顔を近づけて話しかけられるのに」「いつこんな状況が終わるんだろう」と何度思ったことでしょうか。
入所時も部屋まで一緒に入ることは許されなかったので、母がどんな部屋で過ごしているのか、事前に見学した際のことを思い出して想像するのみの日々が続きました。
人との繋がりが大事
コロナ禍で認知症が進行したお年寄りが増えた、といったニュースを見聞きした方も多いでしょう。人との繋がりや交流が希薄になると認知症になりやすいとは以前から言われています。
ビデオ通話ではなく人と直接会って話をすること、人と触れ合うことの大切さを改めて痛感しました。とりわけ、同じ目線で優しく体に触れることは、認知症の方にとって特に有用なことではないかと思います。
名前を呼んでもらえなくても
特養に入所した頃の母は、言葉を発すること自体少なくなっていました。いつの頃からかはっきり覚えていませんが、私の名前を呼びかけてくれることも既になくなっていました。私が娘だということを分からなくなっていたからなのかどうかを確認する術は、もはやありませんでした。
でも、面会に行くと施設スタッフの方が「やっぱり娘さんが来ると嬉しそうですね」と毎回のように言ってくださるので、気持ちは少し救われました。
仮にもう私のことを娘だと分からなくなっていたとしても、少なくとも「目の前にいるこの人(私のこと)は、なんだか良さそうな人だ」「この人が来ると安心する」と感じてくれていたのではないかと、今も信じています。
ななのひとこと・ふたこと
コロナが発生してから、もう3年以上経つんですよね。長かったなぁ。それまで当たり前だと思っていたことがそうではなくなることの怖さや、当たり前の日常のありがたみを改めて考えさせられました。